~掃除道に生きる~田中義人ブログ

  • 割れ窓理論から学ぶ品質管理

    2010年05月01日

    「割れ窓理論」は、1982年、米国のジョージ・ケリングとジェイムズ・ウィルソンが発表した理論です。まずニューヨーク市地下鉄の再建に取り入れられ、その後、ジュリアーニ市長が、その理論の遂行者であるブラットンをNY市警長官に任命し、その理論にそって犯罪を激減させたことで世界的に有名になりました。

    1980年代のニューヨーク市では、年に2000件以上の殺人事件と60万件以上の重罪事件が発生し、地下鉄などは、無秩序としかいいようのない状況でした。その当時、ニューヨークの地下鉄では毎日どこかで火災が発生し、危険個所も放置され、一週間おきに脱線事故が起きていました。その地下鉄の6000車両は、ひどく不潔で、ゴミが散乱し、おびただしい落書きで覆われていました。当然、無賃乗車は当たり前で、物乞いや軽犯罪が横行し、重罪犯罪が年間15000件から20000件も発生。当時、地下鉄公団は、年間150万ドルの損失を出していました。

    そこで、NY地下鉄公団は、1980年半ばに、ケリング博士を地下鉄再建の為の公団顧問に招聘しました。そして彼は、ディヴィッド・ガン地下鉄公団新総裁に「割れ窓理論」の実施を提案しました。ガンは、落書きは地下鉄崩壊の象徴として、絶対に落書きをされた列車を走らせないために、1両でも落書きをされた車両があれば、その場で落書きを消すか、消せない時はその車両を外させ、決して「落書き車両」を走らせませんでした。一方、地下鉄警察指揮官ウィリアム・ブラットンも、「無賃乗車撲滅」を中心にして、落書き、酔っ払いや放尿など、ごく小さな迷惑行為をも決して許すことをしませんでした。

    そして、1994年、ルドルフ・ジュリアーニがニューヨーク市長となった時、ブラットンをNY市警長官に任命し、地下鉄での作戦を全市に適用することを依頼しました。そこでブラットン長官は、軽度の生活環境犯罪を徹底して取り締まりました。その結果、一見、小さな取るに足らないような生活環境犯罪の徹底した取り締まりが、凶悪犯罪の撲滅につながり、就任してから5年後、ニューヨーク市の殺人事件は67.5%減、強盗は54.2%減、婦女暴行は27.4%減となりました。また、地下鉄においても、重罪犯罪が75%も減少し、街に活気が戻ってきました。

    このように、一枚の割れた窓を放置しておくと、その割れた窓が次の割れ窓を作り、不潔環境が拡大し、ゴミが捨てられ軽犯罪が起きるようになり、地域の環境悪化、犯罪増殖へとつながっていくのです。こうして「割れ窓理論」は、最初の小さな一枚への取組みの大切さを示しています。先月のメッセージに書いた「1対29対300の法則」の、300の身近な取組みの重要性と同じです。

    私たちの行っている「掃除」も「割れ窓理論」と同じで、些細なこと、不潔なこと、不快なことを「見過ごすことなく」徹底して改善していくことが、劇的な不良減少、トラブル減少を生み出し、レベルの高い品質をつくれる会社となれることと確信しています。

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