平成3年11月23日、鍵山秀三郎相談役との出逢いから、私の人生が大きく変わっていきました。その出逢いの時に言われた、「掃除を続けてきたお陰で、人生も会社も大きく変わりました」との一言に誘発され、それ以降、日々掃除を続けて今日まできました。
そこで今回は、掃除を通じて変わった、二人の社員を紹介したく思います。
この二人は、今まで何かと不平不満や言い訳ばかりを言って、問題を他人に押し付けていました。私にとっても扱いづらい社員で、一人は掃除や研修に誘っても、用事が出来たと言って、ほとんど参加や協力をしてくれませんでした。
もう一人の社員は、私が定期的に社員向けの講話をし終わった後、必ず感想文や理解度の評価点を書き入れてもらっていましたが、その感想には「会長は何を言っているのか分かりませ ん」と書かれ、評価点は最低に〇が付けられていました。多くの社員がいる中で、この社員だけは、いつもこのような態度でした。
しかし、ここ最近、この二人の社員から、愚痴、不平不満、言い訳を聞いたことがなく、人が変わったようだと周りの社員からも言われるようになりました。その上、この二人は、損得を離れて、献身的な態度を取れるようになりました。
何が、そのように人を変えたのか。その二人に共通することは「掃除」でした。
一人の社員は、それまでほとんど社用車の洗車をしたことがなく、社内で一番汚れた車でも平気で使っていました。しかし、あることで交通事故寸前の事態を起こし、社内、家族を巻き込んでの大問題となりました。その時を切っ掛けに、最初は強制的に会長同伴で洗車をしてもらうこととなりましたが、洗車を続ける中で気持ちが変わり、車がきれいになっていくと同時に、安全運転を心掛けるようになり、他からの評価も変わっていきました。
今では、仕事が終わった後に洗車をするようになりました。その後、毎週水曜日の早朝七時から市神神社境内の掃除を自ら始めるようになり、今では私も誘発されて一緒に掃除をするようになりました。あれだけ言い訳や愚痴を言っていたのに、一切言わなくなり、人柄が変わりました。
もう一人の社員ですが、この社員も周りとなじめずに、ぶつぶつ独り言を言っては自分の殻に閉じこもるタイプでした。しかし、この社員の得意技が草刈で、とても上手でしたので、私は会うたびに、そのことを褒めていたところ、少し心を寄せてくれるようになりました。
そこで、私が常々掃除をしているお不動様の前にある大鈴が汚れていることに気が付き、彼に相談したところ、磨いてくれるこことなりました。そして数日後、ピカピカに磨きあげられた鈴を持ってきてくれました。
様変わりした鈴を見て心からお礼を述べたところ、今度は祭壇前にある真っ黒になった大おりんに目が行ったようで、この大おりんを磨きたいとの申し出がありました。そこから毎週、休みの日には、お不動様のお堂にこもって時間の許す限り磨いていたようです。約三ヶ月後には、まるで金で出来たおりんではないかと勘違いするほど、ピカピカに光輝いていました。
この二人の社員を見ていて、「掃除は本当に、人を変え、人生を変えていく」と思いました。正に「人間は見ているものに似ていく」と言われるように、掃除を通じて相手を磨いてることが、無意識の内に自分自身を磨きあげているようです。