前回、掃除を通じて人生が変わっていった二人の事例を書きましたが、実は、二人に限らず、掃除を通じて変わった人たちには共通項があります。
先日も、「会長、あの人はまるっきり変わってしまいました。みんなとの関係もよくなり、何事も頼みやすくなりました。」と、上司から報告がありました。
これまでは何事に対しても批判的であり、不平不満や言い訳が常だったのが、一緒に掃除をしている内に、不平不満や言い訳やぐちを言うことなく、職場のことを気遣って協力してくれるようになり、今では、なくてはならない人となりました。
これらの変化は、二人に限らず、多くの掃除仲間にもみられることであり、私自身にも言えることだと気が付きました。
掃除を始める前の私は、問題が起きると、社員を責めたり現状を嘆いたりして愚痴が出ることが多く、そのジレンマで悩み続けていました。しかし、掃除を始めて数年ほど経ったころから、自分でも不思議なほどに他に責任転嫁することや、愚痴や言い訳が少なくなっていました。
長年掃除を続けてきて分かったことは、「人間は環境の影響を受けやすいこと」と「人間は見ているものに心が似ていく」と言われるように、無意識の内に環境から思考回路に影響を受けている、ということです。ご存じのように掃除は、汚れた場を掃除することで、場の美しさと本来の機能を取り戻していきますが、その繰り返しの中で無意識の内に思考回路が変革されていくようです。
では、次にどのような思考回路が身に付いていくのかを述べてみます。
・汚れを素直に受け入れキレイになる行為から、問題から逃げない思考を育てる
・変化を見つけ、いいところを引き出していくことの楽しさ
・場が美しく整ってくると場のエネルギーがあがっていく楽しみ
・周りの人たちにもいい影響を及ぼしていく楽しみ
・誰の仕事でもないような掃除をすることで、お互いの信頼関係が高まっていく喜び
このように掃除は、理屈ではなく体を使い、頭を使い、心を使うことで、場のよさを引き出していく繰り返しの中で、無意識の内に傍観者的思考から当事者的思考に変えてしまいます。
そして、相手を生かし喜んでいただける掃除は、結果、自分自身のよさを引き出していくこととなります。