先日、長く勤めてくれた社員の送別会がありました。
その席で、真向かいに座ったA君から、「会長、報告があります。実は、子どもたちがみんな、よく頑張ってくれています。勉強をしなさいと一度も言わなかったのに、長男は予備校にも行かず、有名高校、大学へと進んでくれました。次男も、とてもいい成績で頑張っています。」と、嬉しい話を聞かせてもらいました。
A君は、結婚した時に長期ローンで家を建て、奥様と共に五人の子どもを育てています。奥様もパート勤めをされていますが、五人の子育ては、経済的にも時間的にも大変なことだったと思います。そのため、長男を予備校に通わせることはできなかったそうですが、自分の力で高校、大学へと進み、今ではアルバイトで予備校の講師までしているとのことでした。
「どうして、そんなにしっかりした子育てができたのか」と聞いたところ、「会長が言っていたことをしていただけです」との返事が返ってきました。
私は、経営の目的の一つとして、社員の皆さんに、人間的にも成長してもらい、「よき家庭人、よき社会人、よき企業人」になってもらいたいとの思いを持ってきました。そのために、社員教育に力を入れ、掃除活動、読書の推奨、秀観塾、社員参加型の経営計画づくりなどに取り組んできました。
中でも、家庭でのことで、私は二つのことを何度も話してきました。
一つは、「親が読書をすることで、子どもも自然に読書に親しみ、勉強好きになる」ということ。もう一つは、「毎朝、元気に会社へ出かけ、子どもの前で仕事の辛さや愚痴を言わない」ということです。
親がこの二つを意識して実践していけば、子どもたちは自然と学ぶことが好きになり、やがて働くことにも前向きな人に育っていくのではないか。私は、そう信じて社員の皆さんに伝えてきました。
A君は、まさにそれを奥様と一緒に家庭で実践してくれていたのです。「会長の言われた通りにやってきました。お陰で、思っていた以上に、いい子どもたちに育ってくれました。」
その言葉を聞いた時、私は本当に嬉しくなりました。
「環境が人を育てる」というとおり、子どもは、親から「こうしなさい」と言われたこと以上に、親が毎日どのように生きているかを見ています。そして、知らず知らずのうちに、その姿から考え方や行動の仕方を学んでいきます。
だからこそ、なってほしい子どもの姿を、まず親が自らの姿で示す。なってほしい社員の姿を、まず経営者が自らの姿で示す。
人を育てるとは、言葉で教えるだけではなく、自分自身がその姿を実践して見せることなのだと、A君の嬉しい報告から、改めて教えてもらいました。
私自身も、再度、社員の皆さんや次の世代の人たちに「こうなって欲しい」と願う姿を実践していきたいと思います。



