1991年のバブル崩壊以降、家電製品の中国への生産移管が急速に進み、当社も民生用プリント基板から産業用プリント配線基板への業態転換が急務となりました。その対策として、鍵山秀三郎相談役のご指導のもと、全社での掃除活動を導入しました。
掃除を始めたことで職場環境は一変し、社員の意識が高まり、新分野への挑戦が動き出しました。お客様からの支援もいただき、第二の成長期へ向かう手応えを感じていた私は、最新設備の導入を検討していました。
2003年、取引業者から「大手基板メーカー向けの自動メッキ装置がキャンセルとなり困っている。格安でよいので購入してもらえないか。」という話が舞い込みました。まさに好機到来と思い、十分な検証を行わないまま導入し、すぐ量産へと移行しました。
その結果、品質管理が不十分なまま生産量を拡大してしまいました。数か月後、市場で不具合が発生したとの連絡が入りました。10万個出荷したうち不良は6枚でしたが、ロット管理が不十分で影響範囲が特定できず、10万個すべてが回収対象となる可能性が生じました。
膨大な費用と時間を要する事態に、会社存続の危機を感じるほど追い詰められました。
その時、鍵山相談役の言葉を思い出しました。
「どのような困難な事態でも、誠心誠意尽くせば必ず道は開ける。
過去相も現在相も決定相ではない。すべては過程相に過ぎない。」
相談役が説かれていたトップの姿勢は次の通りです。
・問題が起きたら、まずトップ自らお客様のもとへ出向くこと。
・問題が自社にあるなら、誠心誠意尽くすこと。(部下のせいにしない)
・お金はすべて吐き出す覚悟で対処すること。
→ お金は稼ぎ直せるが、信頼は失えば取り戻せない。
・起きた事実は変えられない。大切なのは受け止め方と対処の仕方。
私は覚悟を決め、社員の先頭に立って対応にあたりました。半年間、生きた心地のしない日々が続きましたが、誠実な対応を重ねる中で事態は徐々に収束へ向かいました。
補償費用は約八千万円に及びましたが、社員の責任にすることなくトップの責任として取り組んだことで、品質管理体制は飛躍的に向上し、その後の成長につながりました。



